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宇宙系大学院生の戯言

東大大学院入試の勉強法(専門科目編)

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はじめに

大学院入試のために読んでいただいている方にまずお伝えしたいのは、この記事は僕自身がどのような思考過程でどのような分析をしたか、その結果なぜこの結論に達したのか、ということを参考にしてください。
対策の仕方は入試の種類にもよって異なるし、そもそも科目が異なります。情報系の専攻ではプログラミングが試験に出ることもあります。
また、みなさんの現時点での学力にもよります。基礎ができているのかできていないのかにもよります。
ですから、ご自分で情報収集をして、この道筋なら合格できるという確信を得るまでしっかり分析して勉強してください。


2017/3/16追記
天文学専攻の過去問の解答(暫定版)を公開しました。
東大大学院天文学専攻の過去問 - AstroBlog



概要

東京大学大学院理学系研究科天文学専攻に合格しました - AstroBlog

さて、上記の記事で宣言した通り、勉強法について書いていきます。一般論というよりは天文学専攻の勉強法について具体的に書いていきますが、参考書選びや試験当日についてなどの話は他専攻を受ける方にも少しは参考になるのではないかと思います。。
参考書代は結構かかりましたが、合格するためだと割りきって必要だと思うものはamazonで中古で買ったりしてすべて揃えました。

参考にしたブログ

院試を受ける上で、情報を得るためにネットで調べまくりました。
まずはお礼の気持ちとして、参考にしたブログを載せておきます。

ま、そういうこと: 院試の勉強法~合格者がドヤ顔で語る~
この方は東大の院試は受けていないようですが、勉強方法について書いてあったので、4月くらいの初期段階で参考にしました。

院死: 天文学的大学生活
天文学専攻に合格された方のブログはこれだけでした。8年くらい前の院試の話で、勉強方法についてはあまり詳しく書かれていませんが、院試当日のことや面接についても書いてあるので、参考になりました。

Daily Physics ー物理学の良い所。 外部からの東大院試(物理)の話
外部から東大院試を受けられた方のブログで、多少勉強方法も書いてあったのでたまに読んでいました。

東大の院試に合格してその後・・ 第2問:行列
マセマが良いのではないかと思ったきっかけの1つとして、このブログがあります。勉強方法について他のブログよりは詳しめに書いてあって、7月くらいに読み込んでいました。

まずは過去問を見てみる

東大理学系研究科の過去問は過去10年分くらい公開されています。
ですので、まずは過去問を見てみて、現時点でどの程度解けるのか、どんな分野が出ているのか、時間配分はどんな感じか、などいろんな情報を得ておくといいです。
ただし、過去問の解答はネット上には一切載っていません。そこが外部生には一層不利な点で、解答作りに苦労しました。後述しますが、僕は一緒に受ける友人と協力して半分くらいは解答を作成できました。
解答を作るという面倒な作業が必要かというと、東大博士課程に在籍中の早稲田の同期は解答は作らず過去問は傾向を調べただけだと言っていたので、解答を作る必要はなさそうです。基本的に過去問と同じ問題は出ないので。分野が同じということはありますよ。
過去問の解答が欲しいという方は、僕のTwitterまで来てくれればお教えします。友人と確認し合ったので、ある程度は信頼できる解答だと思います。
公開するかどうかはしばらく様子を見て考えます。

2017/3/16追記
天文学専攻の過去問の解答(暫定版)を公開しました。
東大大学院天文学専攻の過去問 - AstroBlog

基礎力が不安な人にはマセマかサイエンス社の黄色いシリーズがおすすめ。基礎を広く深く

結論から言うと、僕はマセマとサイエンス社の演習書が一番役立ちました。この結論にたどりついたのが7月中旬だったので、もっと早く気付ければもっと高い点数を取れたのにと少し悔やんでいます。准公務員(東大職員)になってからは大学レベルの数学や物理をやる機会はゼロだったので、基本的な問題も解けない状態でした。

マセマには演習書とそうでないのがありますが、過去問を見て問1すら解けない人は演習書ではない方をやるのがおすすめです。
ある程度基礎が身についてくると、過去問を見たときに解法が少なからず浮かびます。そういう人は演習書からやっても大丈夫かもしれません。ただしマセマの演習書でない方にも演習問題は入っているので、僕の場合はその分だけでも十分でした。

次に、マセマがいいと思った根拠について少し書きます。

  • 学部からずっと東大理物だった方が「院試の勉強は授業のノートと授業で扱われた問題の復習プラス過去問くらいしかやっていない」と言っていた
  • 志望研究室の東北大出身の先輩「院試の勉強は授業のノートと授業で扱われた問題の復習プラス過去問くらいしかやっていない](同じですが強調するために繰り返しました)
  • 東大博士課程に在籍中の、早稲田の研究室の同期「講談社の基礎物理学シリーズと岩波基礎物理シリーズしかやっていない。過去問は傾向を調べたくらいで解いてはいない」

という、合格した方々の勉強法から

授業でやった内容=非常に基本的な内容 を理解することが重要
       ↓↓↓
自分は大学での授業ノートはもう持っていないし(ちゃんとノートをとっていなかった授業もある)、基本を理解していないのだから、むやみに演習から始めるのは得策ではないのではないか
       ↓↓↓
基本的な部分をわかりやすく解説してくれている参考書を探そう。しかし講談社の基礎物理学シリーズなどは例題の解説が不親切すぎるのでもっと解説がしっかりしている本がいいな
       ↓↓↓
マセマなら理論の導出から易しく解説してくれているからこれで勉強しよう

という風に分析してみました。
ただこれは僕のような基礎もできていなかった人間の話なので、基礎力がある人は演習書や他大学の過去問をガンガン解いてみるなどの対策が良いかもしれません。
また、東大の内部生のように院試で出る分野の授業ノートや課題などが充実している人は、授業ノートの復習と過去問で十分かもしれません。

基礎が固まってきたら、定番の教科書や演習書を使用する

元々大学の授業などのおかげで基礎はできている or マセマで基礎が固まってきた人は、各分野の定番の参考書を勉強しましょう。
以下にそのような参考書も載せておきます。



実際に使った参考書

以下では、具体的に僕が使った参考書と使用した方法を羅列していきます。
始めたが7月中旬だったので、マセマシリーズは全て2〜3周しかしていないです。また、サイエンス社の演習書も使いやすいものだけやりました。例年通りの出題のされ方なら、全て5周すれば合格できると思います。ただし、全部きちんと理解しながら進めることが大事です。
一応、マセマ・サイエンス社シリーズを終えるのは最低限の基礎力の段階なので、その他の定番の演習書や過去問(可能なら他大も含めて)をしっかり解くことを強くおすすめします。

1. 数学

数学は2問合わせて9割程度取れたと思います。(まだ得点開示できないので本当の点数はわかりません)
基本的には物理学や天文学で使われる数学が出るので、数学の本での勉強に加えて、物理の中で出てくる特殊関数や微分方程式も導出から深く理解しておくべきです。
実際、今年は数学1でガンマ関数とベータ関数が出ました。ガンマ関数とベータ関数の関係についての設問もありましたが、そのまんまマセマの物理学のどれかの本にあったと思います。
どの関数がどういう風に使われるのか。物理学のどういう分野でよく使われる数学なのか。ということを理解しながら覚えていくといいと思います。

スバラシク実力がつくと評判の微分積分キャンパス・ゼミ―大学の数学がこんなに分かる!単位なんて楽に取れる!
微分積分は最初の方は天文学専攻では出なそうな問題だったので、途中の積分公式を使うところからやりました。天文学専攻の過去問を見た感じでは曲線の長さなどもやっておいた方がいいかなという風に思ったのでそのへんは重点的にやりました。

スバラシク実力がつくと評判の線形代数キャンパス・ゼミ―大学の数学がこんなに分かる!単位なんて楽に取れる!
線形代数は、対角化や固有値らへんを完璧にするくらいでした。量子力学で使われる数学という感じですね。写像は出なそうだったので1回読んだだけにしました。

スバラシク実力がつくと評判の常微分方程式キャンパス・ゼミ―大学の数学がこんなに分かる!単位なんて楽に取れる!
これは全体を3周くらいしただけです。ルジャンドルはすでに出ていたので、ベッセルの微分方程式のところはじっくりやりました。

スバラシク実力がつくと評判の偏微分方程式キャンパス・ゼミ―大学の数学がこんなに分かる!単位なんて楽に取れる!
これは2周くらいです。マセマの力学や量子力学の中で出てくる微分方程式ができれば大丈夫かなと思ってこれは入念にはやりませんでした。

スバラシク実力がつくと評判のフーリエ解析キャンパス・ゼミ―大学の数学がこんなに分かる!単位なんて楽に取れる!
フーリエは過去10年間で複数回出ていたし、研究でも必須の知識っぽいので3周しました。僕の受けた院試でも数学2で出ました。しかしフーリエ変換の公式などは知らなくても解ける問題でした。

スバラシク実力がつくと評判の統計学キャンパス・ゼミ―大学の数学がこんなに分かる!単位なんて楽に取れる!
確率・統計学はあまり対策できませんでした。とは言っても、過去10年間で2回出ているので、ガウス関数などの非常に基本的なところのみ2回くらいやったり、ネットで高校レベルの確率を復習したぐらいです。統計力学の方をしっかりやれば、確率統計についての必要な知識はだいたいつくかなという感じです。

2. 物理学

物理は、1つを深く理解すると他の分野も理解しやすくなります。たとえば力学でしたら、力学・解析力学を深く理解することで電磁気学、統計力学、量子力学にも繋がってきます。
公式や定理の導出も手を動かして、その公式が生まれた理由や、いかに便利な定理なのかという部分まで理解できると、体系的に身につくと思います。

スバラシク実力がつくと評判の力学キャンパス・ゼミ 演習力学 (セミナーライブラリ物理学 (2))
力学はマセマとサイエンス社のものと合わせて2冊を2周くらいした感じです。力学は天文学で必要になりそうです。これくらいは院試を受けた人たちも当然やっていると思いますが、やはりケプラーの法則は全部導出できるようにしました。

スバラシク実力がつくと評判の電磁気学キャンパス・ゼミ〈改訂1〉 電磁気学演習 (理工基礎 物理学演習ライブラリ)
電磁気学もマセマとサイエンス社の演習電磁気学を先に2周ほどして、あとは多くのサイトやブログでおすすめされている砂川さんの理論電磁気学
理論電磁気学
も読みました。基礎ができている人は砂川電磁気学を読みながらサイエンス社の演習電磁気学をやるといいかもしれません。

スバラシク実力がつくと評判の熱力学キャンパス・ゼミ―大学の物理がこんなに分かる!単位なんて楽に取れる!
2周くらいしました。特にマクスウェルの速度分布は今年出るかもしれないと思ってしっかりやりました。結局出ませんでしたが。しかし、近似の方法やシグマを含めた計算方法については熱力学・統計力学でよく出る上に数学の参考書をやってもあまり出てこないので、計算過程については特にしっかり手で書いて勉強しました。

スバラシク実力がつくと評判の統計力学キャンパス・ゼミ―大学の物理がこんなに分かる!単位なんて楽に取れる!
これも2周でした。もう1周していれば本番でプラス60点はとれた気がするので、とても後悔しています。
取り組んだ方法は熱力学と似ています。グランドカノニカル分布、カノニカル分布、ミクロカノニカル分布の流れとフェルミ分布、ボース分布ですね。統計力学は計算がめちゃくちゃ多くて大変ですが、全て手で書いて計算しましょう。見ながらでいいと思いますが、書き写すというのではなく計算方法を確認して理解して、それからそれを自分で考えながら計算していくという感じです。
熱・統計力学については、久保演習
大学演習 熱学・統計力学
や、田崎さんの統計力学
統計力学〈1〉 (新物理学シリーズ) 統計力学〈2〉 (新物理学シリーズ)
が有名ですね。これらは田崎さんの統計力学1を1周しかやっていません。久保演習は難しいですよね。
別の研究室の先輩は久保演習の中から院試で出そうな問題を選んで解いていたらしいです。
田崎統計はたしかに分かりやすかったですが、それでも読むのに時間がかかったので院試が終わってからまた読むことにしました。
マセマを3周くらいして全体的にしっかり頭に入ってから久保演習をやってみると、高度な実力がつくと思います。

スバラシク実力がつくと評判の量子力学キャンパス・ゼミ―大学の物理がこんなに分かる!単位なんて楽に取れる!
量子力学は今年は出なかったのですが、個人的には出るかなと考えていたので2周くらいしました。量子力学の勉強は楽しかったです。
あとは、前野さんのよくわかる量子力学といぎかわ よくわかる量子力学 量子力学1 (KS物理専門書)
をやりました。いぎかわは半分もできていません。よくわかる量子力学は1周だけしました。
上の3冊ではブラケットの説明が少ないので、ちゃんとやりたい人はJ.J.サクライの量子力学をやるといいです。僕はやっていませんが。J.J.サクライは難しかったです。

3. 天文学

内部生が有利です。内部生は学部での課題で似た問題を経験していたりするようです。
超・宇宙を解く―現代天文学演習 天文学の参考書としてはこれを一応持っていました。しかし、あまりやりませんでした。
過去問を見る限り、この本に載っている公式が過去問で出ていたりはするので、可能ならば1周くらいはやると天文学を解くときに役立ちそうです。


その他重要なこと・まとめ

試験本番では、諦めないことが大事


しかし、本番では当然解いたことがない問題が出てきます。東大は問題のオリジナル性が高い反面、基礎力があればあとは一生懸命考えれば解けることが多いです。
ですので、本番では初見は解けそうになくても、諦めずにいろんな方法を考えてもがきましょう。専門科目は4時間もありますが、僕は途中で手が止まったりした影響もあり最後の1秒まで数学2を解いていました。ラスト1時間くらいで、『これはやばいな…』と思って、全ての問題を見直していたところ、数学2が少し進みました。
そして、そのままダメ押しで最後の方まで解けました。あと15分あれば数学2は満点を取れたんじゃないかなと思っています。

一緒に受ける仲間を作る

僕は院試説明会で知り合った仲間と協力しながら院試対策をしていました。というか説明会には最初から仲間探しをするつもりで行きました。
過去問を解き合うとか、お互いがそれぞれ得た情報を共有するとか、励まし合うとかが合格率に大きく影響すると思ったからです。
有力なライバルを1人作ってしまうことにはなりますが、2人で合格すればいいだけの話です。そしてこの作戦は見事成功しました。この友人も僕も第一志望の先生に決まりました。特に友人は人気なBグループを志望した上、面接を2回受けた(面接が1回で終わらない=第一志望のグループで決まらない可能性がある)にもかかわらず第一志望の先生に決まったので、それなりの点数を取れたことになります。

自分のレベルに合っていない参考書をやっても身につかない

マセマをゴリ押ししすぎている感はありますが、勉強をちゃんと始めた当初(5月くらい)は、サイエンス社の分野が細かく分かれている演習書を使いました。
微分積分、線形代数、微分方程式、ベクトル解析、力学、電磁気学、熱・統計力学、量子力学etc… です。amazonで中古で買ったりしました。

演習微分積分 (サイエンスライブラリ―演習数学) 演習線形代数 (サイエンスライブラリ演習数学 2) 演習ベクトル解析 (サイエンスライブラリ演習数学 9) 演習 熱力学・統計力学 (セミナーライブラリ物理学) 熱・統計力学演習 (理工基礎物理学演習ライブラリ (4)) 演習 量子力学 (セミナーライブラリ物理学) 演習 微分方程式 (サイエンスライブラリ―演習数学)

らへんですね。中古で安く買えたりします。 これらも、基礎をしっかり理解している人にはめちゃくちゃ役立つと思います。マセマの演習書かこれらのサイエンス社の演習書をやればある程度広く力をつけられると思います。